葬儀式における留意点

葬儀を考える 会議に参加させていただいている関係で、与えられた資料を読ませていただいている。一昨年 別院でお話された
東京の二階堂行邦先生の講義録(輪読テキスト)を興味深く読ませていただいた。直接お話もLIVEで聞いているのだが、聞き方が悪く
聞き漏らしていることがたくさん発見された。
それとは別に、Web上でお付き合いのある、滋賀県の寺の住職さんが
葬儀屋さんに喪主の方を通して渡してもらっているという文書を
見つけたので、長いがここで紹介しておきます。読者の皆さんも
それぞれいろんな取り組みをされていると思いますので、情報提供をお願いいたします。・・・・・・・・・・宝樹

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真宗大谷派良覺寺住職 谷 大輔


葬儀式における留意事項について

前略 葬儀式における留意事項について思い付くところを、下記の如く挙げました。
 近年の傾向として、葬儀社各位が葬儀式を執行する宗派に対応して、内容を変えているように見受けられます。しかし、如何せん全ての宗教、全ての宗派を掌握するのは不可能かと思われますので、この冊子を作りました。
 良覺寺は「真宗大谷派」に所属しています。
 ですから、「真宗」の教えに適うこと。「大谷派」の行儀に適うこと。
 この二つを心掛けておりますので、他宗、他宗派とは違う独自性があります。検証の上で参考にして下さい。
 葬儀の場が真に仏法に出遇う場として開かれるようご協力をお願いします。

合掌


①葬儀式の開式時間について
○できる限り良覺寺も、火葬場等の都合に合わせますが、必ず住職と確認して下さい。
真宗では「友引」等の習俗によって出棺の時間が決定されることはありません。
真宗大谷派独自の名称について
真宗大谷派では通俗的に使われている名称を独自に呼称する場合があります。
・「仏壇」→「お内仏」
・「菩提寺、檀家寺」→「手次ぎ寺」(「手継ぎ寺」とも書く)
・「戒名」→「法名
・「白木位牌」→「白木法名

③御遺体の安置並びに納棺について
○「頭北面西」(釋尊の入滅のお姿を踏襲)が正式です。
○御本尊、お内仏(仏壇)のある方が「西」になります。例えばお内仏が向かって北の方角にあっても、そちらが「西」です。つまり、お内仏に向かって「右側」が必ず「北」になります。これは荘厳壇も同じです。
○御遺体の手に念珠を掛けることをお忘れなく。
○「納棺名号」はその名の通り納棺するための名号です。
真宗では、刀、銭等は納棺いたしません。

④荘厳壇(祭壇)について
○御本尊が見える荘厳をして下さい(遺影などで隠さないように)。
○向かって右に燭台、向かって左に花瓶、真ん中に香炉と荘厳して下さい。燭台は二ついりません。華束に御供物を盛ります。
○御供物等が荘厳壇に御供えされています。真宗大谷派としては「根(山の物)」「菓(海の物)」「餅(里の物)」を簡素にお備えしますが、ご親族が納得されるように荘厳していただければ結構です。
○基本的には、真宗では、「一膳飯」、「枕団子」、水などの御供えを致しません。

⑤本通夜について
○式次第…総礼・表白・阿弥陀経・念仏・回向・総礼・正信偈・念仏和讃・回向・総礼・法話・総礼(これで約40分)
○「阿弥陀経」が始まってから、回し焼香をして下さい。
○「開式の辞」「閉式の辞」等はあってもなくても結構です。もし司会者がそれらをなさる場合は、第⑦項「葬儀式の司会への留意点」を参照して下さい。
○通夜の席で、葬儀社への勧誘行為は謹んで下さい。

⑥葬儀式について
○僧侶入堂の前に、お内仏(仏壇)、荘厳壇(祭壇)への、蝋燭への点火、燃香(線香をつける)をしておいて下さい。燃香は線香を立てずに寝かせた形でします。
○式次第…総礼・伽陀・観衆偈・念仏・回向・総礼 ──転座──
路念仏・導師焼香・総礼・表白・正信偈・念仏和讃・回向・総礼
○マイクの数にもよりますが、マイクが一本の場合、「表白」の後にマイクを導師の座まで移動させて下さい。
○「弔辞」がある場合は、「正信偈」の前に入ります。
○焼香について、親族焼香は「正信偈」の「五劫思惟」以後となります。この場合、導師以下法中に一礼することを御指導下さい。香炉の数ですが、ご親族ご親戚に人数にもよりますけれど、二つが適当でないかと思われます。この場合、導師焼香が終わりましたら、香炉の位置を真ん中に寄せ、二つを並べる形にして頂きますと、スムーズにいくようです。
○一般会葬者の焼香ですが、人数に合わせて開始の時を決めていただいて結構です。
○喪主の座られる位置について、ご自分の焼香が終わるまで、参詣者の一番の上座に座ります(御本尊の向かって右側)。近年、喪主が会葬者への挨拶に終始し、共にお勤めに参加できない状況があります。世事の付き合いの中で致し方ない部分もありますので、御本尊に背を向けない位置にお座りいただくようご配慮下さい。(会葬者の焼香が早く始まった場合でも、ご自分の焼香が終わるまで、席を動かないよう御指導下さい)
○「弔電」の拝読は一番最後となります。「弔電」は本来ご親族へのお悔やみとして送られたものなので、葬儀式の場で読むべきものではありません。近年の傾向で読むことが一般化しておりますので読むことを止めるわけにはいきませんから、できるだけ早く終わらせるようご配慮下さい(早口で読む、名前だけにする、割愛の数を増やす等)。
○葬儀式終了後の出棺にさいし、導師を中心としたお勤めは致しません。住職は、喪主の挨拶の時には装束を整えて、末席にいますので、挨拶が終わりましたら、手配の車に同乗します。

⑦葬儀式の司会への留意点
○「開式の辞」→「合掌」→出棺勤行開式の順でお願いします。
○「開式の辞」に、引用文、俳句等を入れないで下さい。
真宗大谷派では、合掌礼拝はありません。合掌は導師の合図、又は「伽陀」発声を合図にして解きますので、司会者の方からの合図は必要ありません。合掌は「総礼」といって、儀式の始まり、儀式の一部ですので、それ以後、例えば導師に勤行を依頼する言葉を入れることは止めて下さい。
○司会者の方が使って欲しくない言葉と適切な表現。(勿論、弔電等に寄せられた言葉は致し方ないので、そのまま拝読して下さい。)
・「回向」「読経」→「勤行」「お勤め」
・「追善・供養」「菩提を弔う」「冥福を祈る」→「亡き人を憶念する」「偲ぶ」
・「天」「天国」→「お浄土」
・「旅立つ、死出の旅」→「往生する」
・「告別式」→「葬儀式」
・「霊・御霊」、「草葉の陰で」、「安らかにお眠る・永眠する」などの言葉は使わない。

⑧その他
真宗で葬儀式を執行する場合、死を忌避し死者を冒涜する習俗を行いません。例えば、清め塩、茶碗割り、棺を回してから家を出る、火葬場への行き帰りの道を変える等。──蛇足ですが、大阪の葬儀社は、「死=穢れ」とするこれらの習俗は葬儀に携わる自分たちの仕事を貶めることになるとして、行わないように指導するという立場をとりました。
○また真宗では、死に浄土往生という意味を頂いてきました。ですから「三途の川」信仰に代表される、死後世界の彷徨を云々する習俗をいたしません。例えば、六文銭を納棺する、棺の蓋を石でたたく、「死出の旅立ち、冥福を祈る」などの表現等
○葬儀社の担当者によりますが、真宗大谷派の教義、行儀に適さない習俗を、さも当たり前のことにように、ご親族に指導されている方があります。その指導をしてよいかどうか、必ず住職とご相談下さい。
○大切な仏教用語である「供養」という言葉が乱雑に使われすぎています。ご親族やご親戚との会話の中でも、できるだけ使わないようにして下さい。
○焼香の作法について聞かれた場合、お香を頂かず、二回するのが大谷派の作法だとお答え下さい。


以上